CSA

住宅街にほど近いところ、あるいは住宅街の真ん中に、農場がある。

 

農場の仕組みは以下のとおり。

  • 住宅街の住民が、農場の会員になる。
  • 会員は年会費を払う。
  • 年会費により農場経営が賄われる。
  • 会員は農場でできた農産物を受け取る。
  • プロ農家にとっては農場経営が安定する。
  • 地域の人々にとっては、目に見える形できわめて新鮮な農作物を手に入れることができる。

こうした仕組みを、CSA といいます。

 

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CSA とは

「コミュニティ・サポーティッド・アグリカルチャー(Community-Supported Agriculture)」

の略です。

直訳すると、

「地域に支えられた農業」

という意味になります。

 

この仕組みでは、

  • 農家の収入は年会費によって賄われているため、安定します。
  • 豊作や不作による収入変動(ボラティリティ)が 小さくなります。

豊作や不作のリスクは年会費を払っている会員(おもに地域住民)が負担するわけですが、

  • 大勢でシェアするため、1人あたりの負担が少ない
  • 地元の農業を応援する感覚で年会費を払うため、不作でも納得できる
  • 目に見える形で農業生産が行われるため、偽装もなく、安心できる

という理由で、リスク負担に対する抵抗感も少なくなっています。

つまり、農業経営につきまとうリスクを、コミュニティ全体で負っています。

 

おかげで

  • 農家は安心して農業に集中できます。
  • 農業に集中することで、農作物の品質の向上も期待できます。

また、「食べ手」である地域住民とのコミュニケーションがしやすいため、どんな作物をどれだけ作ればよいかの計画が立てやすいです。

 

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CSA の中には、観光やグリーン・ツーリズムの対象になっているところもあります。

旅行者が農作業を手伝いにやって来たり、敷地内をガイド付きで散歩したりします。

 

CSA は現在、北米に大小含めて10,000か所以上、存在しています。

かつては、農園がかねてから存在しているところに、人口が増え、住宅街ができるという形でCSA が形成されました。

人口が増えてにぎやかになったのはよいのですが、ひとつ問題が起きました。

肥料や家畜などのにおいです。

このにおいを嫌い、去っていく住民もいました。

しかし農園に理解のある住民は残りました。

彼らは、この農園を応援するようになりました。

これが CSA の始まりです。

 

すると、農業を応援したい人たちが近所に引越ししてくるようになりました。

「CSA は環境に優しい街づくりに貢献している」

ということで、農園のあるコミュニティのイメージが良くなり、さらに人口が増え、農園を訪れる観光客も増えました。

すると、土地の値段が上がりはじめました。

いまではアメリカでは、

「CSA がある街は土地の値段が上がる」

と言われるようになっています。

そのため、不動産のデベロッパーも、住宅地のなかに CSA を作りたがる傾向があるようです。

 

つまり、かつては

「まず農園があり、次にその周囲に住宅街ができた」

という順番だったのが、デベロッパーの介入により、

「住宅街と農園をセットで開発する」

という動きになってきたということになります。

CSA の存在によって土地の値段が上がるのは住民たちにとっても喜ばしい(資産価値が上がる)ことですので、そうした実利的な意味でも、彼らはせっせと農場を応援しています。

 

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住民が地域の農場を応援するという考え方は、当然ですが日本にも存在しています。

CSA はもともと日本で生まれたアイデアが、アメリカで広がったとも言われています。

しかし、日本では

「住民の資産価値を上げる」

というところに

この仕組みを結びつけることは

できていません。

アメリカでは、それができました(※)。

農業を応援するという「心情的な価値」に加え、実際の資産価値を上げるという「経済的な価値」まで生み出してしまえば、広がるスピードは格段にアップするというわけです。

 

(※)アメリカは引越しの多い社会ですので、人々はもともと

住宅を買い、住む → 住宅の資産価値が上がるのを待つ → 上がったら売却し、より大きな住宅に引越しする

といった流れに乗ろうとします。

 

そういう点で、CSA と住宅資産が、日本よりも結びつきやすいのかもしれません。

 

 

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