食育の投資効果

アメリカの中学校は学内に飲み物やスナックの自販機がいろいろ置いてあるようです。

設置しているのは学校側ではなく飲料メーカーです。

 

飲料メーカーは自販機の売上の一部を学校に支払っていました。

経営が楽ではない学校にとってもこの収入はありがたい存在だったようです。

 

しかし、売られている商品はジャンクフードそのもので、中学生の肥満の原因の1つになっていました。

親たちも学校側も、この状態を何とかしたいと考えていました。

 

とはいえ問題は簡単ではありません。

自販機の売上が学校の収入になっているおかげで、親たちは子どもの学費を安く抑えることができていたからです。

つまり、自販機を撤去してしまうと学費が値上がりする。

親たちもそれが分かっているのでむやみやたらと「自販機撤去」を唱えることができませんでした。

 

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かつて、サンフランシスコにあるアプトス中学校というところでPTAがこの状況を変えようと立ち上がりました。

思い切って清涼飲料水やジャンクフードの自販機を撤去。

同時に、校内のカフェテリアでヘルシーフードを提供するようにこれまでのメニューを一新しました。

 

で、どうなったかというと…。

むろん、生徒の栄養状態が改善し、成績なども上がったと思われますが、その「良い副作用」として、

  • 保健カウンセラーを利用する生徒が減り、保健カウンセラーを雇う必要がなくなり、人件費がセーブできた(保健師が常駐していたわけではなかったようです)。
  • 学校の裏庭からゴミがなくなり、清掃の費用がセーブできた。

その結果、自販機収入が減った分よりコストセーブのほうが圧倒的に大きくなり、学校の経済状態が見違えるほど改善したというのです。

 

このことがきっかけで、アメリカの中学校で自販機を撤去するところが増えました。

子どもが健康になる、成績が上がる、ということも大事ですが、この改革が広まった最大の理由は

「経済状態が大幅に改善するとわかった」

これだったといわれています。

 

自販機を撤去する(収入が減る)を「投資」とみなし、人件費や清掃費のセーブを「リターン」とみなすと、

  • 投資<<リターン

となった。

これが何よりの原動力だったということです。

 

アプトス中学のPTAは、事前に

「この投資には見返り(リターン)があるか?」

をシミュレーションし、綿密な計画を立てて実行したそうです。

 

「どうなるか分からないけどとりあえずやってみたら、うまくいった」

ということではありませんでした。

 

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以上、食育の推進にもビジネスの感覚が役に立つ、という事例を紹介させていただきました。

言いかえれば、経済的メリットがなければ食育は進んでいかないのかもしれません。