フード・ディバイド

2005年ごろ、アメリカで

「フード・ディバイド(Food Divide)」

という言葉をときどき目にしました。

 

オーガニック食品や野菜中心の食生活をする人が増えてきている一方で、ジャンクフードから離れられない人も大勢存在する。

そういう

「食生活によって人が分断される」

状況のことを、フード・ディバイドと呼んでいました。

 

もともと、

「デジタル・ディバイド(Digital Divide)」

という言葉が先にありました。

デジタル・ディバイドは、アメリカのゴア副大統領(当時)が提唱したとされ、

「パソコンやインターネットを使いこなせる人」

「使いこなせない人」

とのあいだで、経済格差が広がっていることを憂慮した言葉です。

 

おそらくこれがフード・ディバイドの語源なのでしょう。

 

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フード・ディバイドを端的に示す例があります。

 

2005年ごろには、アメリカのそこかしこにヘルシーなレストランが増え、野菜中心の食生活を始める人が目立つようになっていました。

あのマクドナルドも、

「長いものには巻かれろ」

と思ったのか、かなり豊富なメニューでサラダを出すようになりました。

 

ところが、そんな風潮にも関わらず、時流に反抗するかのように、バーガーキングが

「わが社のハンバーガーは野菜を減らし、肉の量を倍にする。脂の量も増やす!」

という発表をしました。

どうなったでしょうか?

答。肉たっぷり、脂こってりのバーガーキングの売れ行きは倍増。

売れに売れて、バーガーキングの株価も高騰しました。

その後、メガサイズのハンバーガーが各社から売られだしました。

(日本でもメガサイズのハンバーガーが出ましたね)

 

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フード・ディバイドは単に食生活が違うという話ではありません。

食生活が違えば、価値観が違ってきます。

価値観があまりにも違ってくれば、友だちになることも、恋愛や結婚をすることも、簡単ではなくなります。

そのため、分断されてしまうのです。

 

このことは社会問題でもあり、マーケティングを考えるうえでの重要な要素でもありました。

 

日本でも

「食生活によって人が分断される」

状況は、以前から指摘されていました。

 

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フード・ディバイドはその後も深刻化しているようです。

関連記事を2つ、紹介します。

 

Eating healthy vs. unhealthy diet costs about $1.50 more per day

 

2013年12月に、ハーバード大学が発表した記事です。

これによると、

  • ヘルシーな食事にこだわる人(野菜や果物、ナッツ類を積極的に食べる人など)
  • そうでない人(加工食品や精製された穀物をよく食べる人など)

の食費の違いは、前者が後者より1日あたり1ドル50セント高い(日本円でいうと150円の感覚)ということです。

 

1日150円という差が大きいか小さいかは意見の分かれるところですが、この記事では

「150円しか違わないのだから、ヘルシーな食事をもっと心がけよう」

という論調になっています。

 

たしかに、1日150円の違いで将来の生活習慣病のリスクが減ると思えば、150円を惜しむのは良くない、という気になりますね。

 

しかし、実際にはそれほど単純は話ではないようです。

デジタル・ジャーナルの2014年1月の記事にこういうのがありました。

 

Obesity declines among rich US teens, rises in poor

 

これによると、アメリカの10代のあいだでは、

  • 裕福な家庭では肥満が減少しているが
  • 貧しい家庭では肥満が増加している

そうです。

 

これは、貧困層が1日150円の出費を惜しんでいる、というわけではなく、生活圏のなかにヘルシーな食材を売っている店がないため、買いたくても買えない、というところに原因があるようです。

貧困層の多くはスーパーマーケットのない地域に住んでおり、コンビニ、ガソリンスタンド、ファストフード店などで食品を入手するしかなく、そういうところにはヘルシーな食材は売っていないのです。